法務

CFTC(米)とESMA/MiFID II(EU)のアルゴリズム取引要件に沿う、監査証跡・説明責任対応方針について

1. 序論:規制準拠と当社のミッション

AI MQL合同会社(以下、当社)は、AI取引における「ブラックボックス問題」の解決を戦略的ミッションとしています。このミッションは、米国商品先物取引委員会(CFTC)および欧州証券市場監督局(ESMA)がMiFID II(第二次金融商品市場指令)を通じて求める、金融市場の透明性と公正性の要求と完全に合致します。

ESMAはAIの「不透明な意思決定(Opaque decision-making)」をリスクとして懸念し、CFTCもAIが既存の「監査証跡(Audit Trail)」義務から免除されないことを明確にしています。当社が提供する「AI×法務×SRE」統合型ソリューションは、これらの規制当局が要求する「説明責任(Accountability)」と「監査証跡の完全性」を技術的に担保するものです。

本方針は、当社が開発・運用する全てのアルゴリズム取引システムが、グローバルスタンダードに準拠するための基本原則を定めます。

2. 規制対応フレームワーク:3層構造の採用

当社は、CFTCおよびMiFID IIの要件を満たすため、提供レポートで提言された「設計」「運用」「記録」の3層構造フレームワークを採用します。これは、当社の「矛(GenAI/QA)」と「盾(XAI/SRE)」のビジネスモデルと統合されます。

3. 【設計層】説明責任を担保するガバナンスと開発プロセス

アルゴリズムの開発初期段階から説明責任の所在を明確にし、監査可能性を確保するガバナンス体制(コンプライアンス・バイ・デザイン)を構築します。

3.1. アルゴリズム・インベントリ(台帳)の確立(MiFID II RTS 6準拠)

使用する全てのアルゴリズムを網羅する中央集権的な「アルゴリズム・インベントリ」を構築・維持します。これは法的な責任の所在を定義する根本台帳として機能します。

  • 所有権の明確化: 各アルゴリズムに対し、説明責任を法的に負う「所有者(Owner)」と「承認済みオペレーター(Approved Operators)」を明確に定義し、記録します。
  • 詳細情報の管理: アルゴリズムの戦略、意図された挙動、リスクパラメータ、承認履歴を網羅的に管理します。
3.2. 監査可能な変更管理と技術的強制(CFTC Reg AT / MiFID II準拠)

CFTCが要求する「監査可能なソースコードリポジトリ」と、MiFID IIが要求する「厳格な変更管理」を統合的に実現します。

  • 技術的強制(Enforcement): 変更管理システムとソースコードリポジトリ(CI/CDパイプライン)をAPI連携させます。コンプライアンス部門による最終承認が得られていない変更が、本番環境へデプロイされることをシステム的に拒否する仕組みを構築します。
  • 完全なトレーサビリティ: 全てのコード変更(コミット)が、「誰によって、いつ、なぜ」承認されたかの完全な記録と不可分に紐づくことを保証します。
3.3. GenAIを活用した高度なテスト(MiFID II RTS 6/7準拠)

当社のGenAI技術を活用し、規制当局が求める「洗練されたシミュレーション」を実現します。

  • ストレステストとコンダクトリスク・テスト: GenAIを用いて過去データには存在しない極端な市場シナリオを生成し、アルゴリズムの堅牢性検証および市場不正(スプーフィング等)パターンの非生成を確認し、証跡を保存します。

4. 【運用層】リアルタイム統制とSREによる証跡確保

当社の「金融特化型SRE(盾)」は、アルゴリズム稼働中の市場健全性を担保し、その運用記録を確実に保持します。

4.1. SREによるレジリエンスとキャパシティの保証(MiFID II Art 17準拠)

MiFID II Article 17が要求する「レジリエンス(強靭性)」と「十分なキャパシティ」を技術的に担保します。

  • コンプライアンスの証拠: SREチームが監視する稼働率、レイテンシ、キャパシティ使用率等のメトリクスは、規制当局に対するコンプライアンスの証拠(Evidentiary Artifacts)として記録・保持します。
4.2. キルスイッチ機能とインシデント対応記録

MiFID II(RTS 6)が要求するキルスイッチ機能を実装します。

  • 手動介入の記録: キルスイッチの作動は重要な「手動介入」イベントとして扱います。作動ログ(操作者、時刻、理由コード)は、不変の記録として監査証跡データベースに記録します。

5. 【記録層】完全な監査証跡とXAIによる説明責任の実現

本セクションは、当社のコアコンピタンスであるXAI技術を活用し、「何が起きたか(What)」と「なぜ起きたか(Why)」を証明する、不変の監査証跡と説明責任を実現する方策を定義します。

5.1. 統合監査証跡データモデルの採用(CFTC/MiFID II/CAT準拠)

CFTC(17 CFR § 37.205)が要求する「注文ライフサイクルの完全な再構築」と、MiFID II(RTS 24)が要求する「説明責任フィールド」の双方を満たすため、「統合監査証跡データモデル」を採用します。これは、米国のCAT(Consolidated Audit Trail)仕様も包含するものです。

  • ライフサイクルの再構築: 注文の受領から執行までの全イベント(新規、変更、キャンセル、約定)を時系列で完全に再構築可能なデータ構造で記録します。
  • 説明責任フィールド: 「投資決定者コード(Investment Decision Maker Code)」等を記録し、決定主体を明確にします。
5.2. XAIによる「デュアル・ログ・アーキテクチャ」(説明責任の担保)

ESMAが懸念する「ブラックボックス問題」を根本的に解決するため、当社独自の「デュアル・ログ・アーキテクチャ」を構築します。

  • 「What」と「Why」の記録と紐付け:
    • 従来の監査証跡(上記5.1)が「何が起きたか(What)」を記録します。
    • AIが取引決定を下すたびに、XAI技術(例:SHAP, LIME)を用いて「なぜその決定がなされたか(Why)」を説明する「説明可能性ログ(XAI Log)」を生成します。
  • 説明可能性ログの内容: モデルID、決定内容、確信度に加え、決定に最も寄与した主要な特徴量と寄与度を記録します。
  • 証明: 両ログを「XAIログ参照ID」で紐付けることにより、規制当局に対し、特定の取引の根拠を客観的かつ技術的に証明することが可能となります。
5.3. 法令遵守の記録保持(WORMと容易なアクセス)

CFTC(17 CFR § 1.31)およびMiFID II(MiFIR Art. 25)に基づき、全ての規制記録を最低5年間保持します。

  • 容易なアクセス(Readily Accessible)の保証: CFTC要件に基づき、電子記録は5年間の全期間にわたって「容易にアクセス可能」でなければなりません。当社SREチームは、復元に時間を要するコールドストレージではなく、検索・取得が即時に可能なウォームストレージにデータを保持するアーキテクチャを採用します。
  • 不可改竄性の担保: 記録の真正性を保証するため、改竄防止のWORM(Write-Once, Read-Many)形式での保存を標準とします。

6. 結論

本方針で定義したフレームワークを実装・運用することにより、AI MQL合同会社は、CFTCおよびESMA/MiFID IIの厳格な要件を高度に満たします。XAIとSREを核とした当社の技術は、規制当局が要求する監査証跡と説明責任を完全に果たすものであり、顧客がグローバル市場で信頼を獲得するための強力なRegTechソリューションとして提供してまいります。

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